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Channel: Cape Fear、in JAPAN
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空き缶を、噛み切れますか

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「―おはようございます」
「おはよう。まぁまぁ! 相変わらず大量ねぇ」
「すいません、ほとんどアル中なものでして」
「(笑う)そんなことはないだろうけど、この棟でいちばん空き缶を出しているのは、あなたでしょうね」
「ですよね」
「あなたは唯一の独り暮らしなのに」
「ですよね」
「お酒代も、馬鹿にならないでしょう」
「えぇ、ほんとうに」
「だって…ほら、生ビールが多い」
「えっ」
「私のところなんか、ほとんど発泡酒」
「(苦笑)最初の一本目だけですよ」
「これだけ呑むと、月にどれくらいかかるの?」
「計算とかしたことないですけど…まぁ、このために働いているようなものですから」

・・・という会話を、きのうの早朝、同じ棟に住む奥さんと展開した。

2度3度ではない、この10年、ひたすら繰り返されてきた会話。
ウチの団地のゴミ置き場では「よく見る」風景、となっている。

そのくらい、ビールを呑んでいるという話だ。

空き缶を処分しているとき、どうしても笑いがこみ上げてくる。

よくまぁ飽きもせず、これだけ呑むものだなと。
自分に感心しつつ、なかば呆れているっていう。


「このために働いている」というのはジョークでもなく、ほんとうにそうだよなと実感する日々がつづく。


最近知り合った若い子から、「ふだんは家で、なにをされているんですか」という質問を受けた。

「まぁ、呑んでいるよね」
「晩酌ですか」
「うん」
「呑みながら、なにをされているんですか」
「ニヤニヤしてる」
「(笑う)それだけですか」
「好きな映画や格闘技の映像を観たり、適度な量を保てば、文章も乗ってくるしね」
「呑んで、書くんですか!?」
「適度な量を保てば、、、の話ね。君は呑まんの?」
「呑み会以外では呑まないですねぇ」
「好きじゃない?」
「嫌いなわけではないですけど、好きでもないんだと思います」
「じゃあ、家でなにしているの?」
「スマホのゲーム、、、ですかね」
「ここでも出来るじゃん?」
「えぇ、まぁ」
「呑むのは、ここでは出来ない」
「そうですね」
「ここで出来ないことをするのが、家ってことじゃない?」
「そうですかね」
「呑んだり、オナニーしたり」
「(笑う)そうですかね」
「オナニーは?」
「えっ」
「毎日、ちゃんとしてる?」
「・・・・」

彼は赤面するだけで、なんとも答えなかった。

なんだ、つまらんヤツだなぁ。
自分が、しょーもないヤツみたいになってしまうじゃないか。

まぁしょーもないヤツなのだけれども。。。


先日―。
酔った勢いで、『プラトーン』(86)のケビン・ディロンのモノマネをやってみた。

この映画にはケビンのほかにジョニー・デップやフォレスト・ウィテカーなどなど、このあとに活躍する若手俳優が多数出演しており、いま観ると、とっても感慨深くなる。
なかでも好演しているのがマットの弟ケビンであり、彼はこの作品で空き缶を噛み千切るという芸? を披露している。

出来る自信はなかったが、酔っていたものでね。

結果は、失敗。

口のなかを切ってやんの。

バカでしょう、41歳にもなって。

でも酔っているからか、痛みを感じることはなく、鏡で自分の口を見て、ただヘラヘラと笑うのみである。

翌朝になってそのことを思い出し、少し後悔する自分。
それを誤魔化すために、迎え酒だと自分にいい聞かせてさらに酒をあおる。

・・・。

少し前まではジョークでアル中といっていたが、いよいよ笑えなくなってきたかもしれない。


まぁいいや、自分でアル中といっているあいだは、まだ大丈夫だろうから。

たぶん、、、ね。




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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(109)』

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